岸川整形外科

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最新の医療情報

肥満に対する整形外科的アプローチ

 

 近年、食生活が豊かになり、運動不足とも相まって生活習慣病といわれる病気またはその予備群が急増している。また、私たちは高血圧、高脂血症、糖尿病、痛風など代謝異常による病気に独立して罹患するのでは無く、気が付くといくつかの病気に同時にかかっており、これらの病気はお互いがお互いを悪化させるような関係にあり、メタボリックシンドロームと呼ばれている。肥満がこの症候群の大きなリスクファクターになっていて、肥満の予防がこれらの疾患の予防になることは論を待たない。

整形外科に腰痛や膝痛で受診される患者さんの多くに肥満、生活習慣病が見られる。当院では患者さんの痛みのメカニズムを分析し、治療により痛みを軽減させるだけでなく、運動療法や生活指導により構造的に安定させ痛みの再発を防ぐ体系的治療を行っている。腰痛やそれに伴う神経痛、膝痛に代表される下肢関節痛の治療予防には肥満のコントロールが不可欠であるが、「運動したいけれど痛くてできない。」というジレンマがある。そこで、痛みを生じる疾患を治療しつつ肥満をコントロールするという複合的治療が必要となるわけだ。

肥満の治療は一言でいうと「体に入ってくるエネルギーと出て行くエネルギーとを代謝をスムーズにしてバランスをとる」ということになる。前者は食事療法によるところが大きく、後者は運動療法によるところが大きい。それぞれについて整形外科的アプローチを考える。

 

 
評価
 
1.整形外科的診断
 
専門医による診断が必要。腰の痛みだけでも痛みの部位や年齢や生活様式によって診断は異なり治療も異なる。また、同じ診断でもその疾患の病期によっても治療法は異なる。疾患によっては禁忌となる運動もあり、自己流で行っている体操が病気の状態を悪くしていることは日常の診察でよく目にすることである。
 
2.肥満の評価

体重、体脂肪率、BMI、基礎代謝、筋肉率など肥満に関する計測を定期的に行い記録する。個人用のカードを作成して、変化が一目でわかるようにする。
体重はできれば自宅で毎日計っていただき簡単なグラフにしてもらう。現状を知る勇気をもたなくては前に進めないし、書くだけでもダイエットのモチベーションが高くなる。

  1. BMI現在のところWHOなど国際的に認められている肥満の基準はBMIである。25以上で肥満、30以上で高度肥満とされている。
  2. 基礎代謝については正確に呼吸ガスから分析する方法ではなく、最近廉価になり発売されている分析機能付体重計によって計算から割り出した近似値にて代用する。1日のエネルギー代謝の約70%に相当するため、筋トレによって基礎代謝を上げると消費エネルギーは増えることになるが、肥満の方は意外と基礎代謝は高いのも事実である。
  3. 歩数計 最近は歩数計も進歩しており、ポケットに入れるだけでよく、カウントの誤動作も少なくなっている。1日8000歩から10000歩が目標ですが、まず自分が1日何歩ぐらい歩いているかを知る。
 
 
治療
 
運動療法
 
1.ストレッチ
 
すべての運動の開始、終了に当たってはウォーミングアップ、クーリングダウンのストレッチを十分に行う。ストレッチをすることによってその後でする運動の筋肉の運動効率が良くなるし、運動による事故を防止する意義も大きい。
 
2.整形外科的疾患に対する運動療法
 

まず、痛みを生じている疾患を治療するのに必要な運動療法を行う。たとえば変形性膝関節症に対する大腿四頭筋訓練など必要不可欠な訓練が自宅で日常の習慣となるように指導し、実際に習慣となったことが確認でき、痛みも軽減してきた時点で肥満に対する運動療法を加える。痛みがある時にはアイソメトリックに筋力訓練を行い、痛みが無いときには動かしながら徐々に負荷を加えていくが最大筋力の70%を越えない範囲とする。負荷の加え方はいろいろあるが、求心性の運動より遠心性の運動の方が効果は大きい。

 
3.肥満に対する運動療法
 
  a.有酸素運動
  有酸素運動に達する心拍数を計算式にて割り出し、心肺機能にトラブルなど起こらない事を確認しながら自転車エルゴメータなどで徐々に心拍数を達成する。日常では散歩を勧めるが、心拍数を参考にしながらまずは1日は30分程度を目標にする。10分を3回でも効果が無いことは無いが、30分連続の方が有酸素運動の時間は長くなるし、有酸素運動に達するまでに15分ぐらいかけて心拍数を上げた方が安全である。腰痛や関節痛のある場合は水中歩行を勧めるがスロープのないプールでは入水の際に注意を要する。
目標心拍数=(220−年齢−安静時心拍数)×係数+安静時心拍数
 
b.筋力訓練
大きな容積の筋肉ではエネルギーの代謝が大きいと考えられる。四肢の筋肉よりも、姿勢を維持する体幹の大きな筋肉をストレッチしたりトレーニングしたりしてエネルギー代謝の場である筋肉を作る。
 
  c.スポーツ施設との連携
水中歩行は現段階ではスポーツ施設に依頼して行っているが、将来的には院内に治療用プールを作りたい。スポーツ施設との間の情報交換には連絡カードを使用している。特に手術後などの禁忌事項は必ず伝えるようにしている。
 
運動療法


医食同源! 薬剤を使うより食事で治療する。
1.現状把握食べたものを書き出す
2.難しいカロリー計算よりも単位数など大まかな評価と調整を
3.カプサイシンなどの薬味
4.ビタミンなどを損なわない調理法
5.一日のうちでのカロリー配分の工夫

 

運動療法の実際

 ひざや腰に痛みがある場合は、まず整形外科医に相談してください。
水中歩行は人によっては不適切な時もありますから、注意しましょう。
運動中、後の水分補給はしっかりしましょう。
 
  ■症例1
   
 

●病歴
43歳女性 主婦 身長160cm 体重77kg 体脂肪率33% 1月くらいから平地の歩行では痛くないが、階段の上り下りや床に座る時に膝が痛い。お餅の食べすぎで3kgぐらい太った。特にスポーツはしていない。

●整形外科的診断
膝蓋大腿関節障害
膝のお皿(膝蓋骨)と太ももの骨(大腿骨)との間の関節の障害でしゃがむ動作が痛みの原因となる。膝の曲げ角度にもよるが体重の8倍くらいの圧力が加わる膝蓋大腿関節にスポーツなどの要素が加わって発症することが多い。
肥満の評価:BMI=30

【運動療法】
(1)治療体操
 @大腿四頭筋(大腿の前面)のストレッチ

うつ伏せになり、片足を曲げる。つま先を手でつかみ、尻に引きつける。

 A大腿四頭筋(大腿の前面)の筋力アップ

片ひざを立て、反対の足は伸ばす。伸ばした足の、大腿前面の内側に力を入れるように意識して、床から20cmほど上げ5秒キープする。
(2)痛みが治まったらダイエット
  ウォーキングする時は、坂道や階段は避け、30分ぐらいから始め、一日10000歩を目的とします。
水中ウォーキングはとても良いことですが、プールに入る時と出る時にスロープやステップを使用して、膝を強く曲げないように注意して下さい。
エアロバイクは、サドルを高めにして膝を強く曲げないように注意して下さい。
   
  ■症例2
   
 

●病歴
50歳男性 教師 身長170cm 体重80kg 体脂肪率28% 以前から軽い腰痛はあったが、去年の秋ぐらいから授業中などに長く立っていると両方のお尻から足にかけてしびれるような痛みを覚えるようになってきた。自転車で2kmぐらい通勤しているが全く痛みは無い、自転車が壊れたので歩いて通勤してみたところ腰から足の痛みのため1kmぐらい歩いたところでベンチがあったので10分程度休んだら痛みがなくなったのでまた歩いて出勤した。

●整形外科的診断
腰部脊柱管狭窄症
腰の背骨(腰椎)の中にある神経の通り道(脊柱管)が年齢とともに骨や靭帯の肥厚によって狭くなってしまい神経の血行障害を来たす。歩行すると足腰が痛くなってしまい、一度しゃがむとまた歩けるようになる(間欠性跛行)という症状を来たす。自転車人口の多い佐賀では「自転車ではどこまででも行けるばってん、歩きよっぎんた足の痛とうなって休まんばいかんもんねー」と聞いたらまずこの病気を疑う。後ろに反り返ると症状が強くなり前に曲げると楽になる人が多い。
肥満の評価:BMI=28
運動療法:

【運動療法】
(1)治療体操

歩いていて脚が痛くなったら椅子を見つけて腰掛けてください。脚の痛みが消えたらまた歩いてください。

腰椎の脊柱管にある神経に対して優しい姿勢としては、膝を立てるか、足を台の上に乗せて股関節を90度に、膝関節を90度に曲げたりする(90°−90°ポジション)のが良いと考えます。
 
(2)痛みが治まったらダイエット 
  ウォーキングよりエアロバイクがお勧めです。脈拍が有酸素運動ゾーンまで行けたら理想的ですが、この疾患は動脈硬化と合併する事が多いので、運動強度には注意が必要です。
 
  ■症例3
   
 

●病歴
34歳男性 長距離トラック運転手 身長175cm 体重90kg 長時間運転していると腰から右臀部から下肢が痛くなる。横になると改善するが、時々荷物を持ってたりすると激痛を生じる。市販の痛み止めを使いながら仕事を続けている。このままだと仕事ができなくなるような気がしている。

●整形外科的診断
腰椎椎間板ヘルニア
腰の背骨(腰椎)の骨と骨の間にある椎間板の圧力が高くなって神経のある側に飛び出して神経にあたり下肢に激痛を生じる病気。体位にもよるが体重の10倍くらいの圧力が椎間板には加わる。神経痛が強いときは安静を基本とした治療が必要で、各種治療によって神経痛が和らいできたら椎間板の圧力を減らす体操(マッケンジー体操)や運動療法を行う。この症例ではMRIによる精密検査の上、椎間板ブロックという特殊な治療をしてはじめて運動療法が可能となる。痛みの程度や時期に対応して治療を変える必要のある代表的疾患である。
肥満の評価:BMI=35
運動療法:

【運動療法】
(1)治療体操

マッケンジー法による腰椎伸展体操
痛みが強い時は肘をついて腰椎を持続的に伸展。可能であれば手をついて腰椎を限界まで伸展しますが、背中の力は抜いて行ないましょう。背筋訓練ではありません。
(2)痛みが治まったらダイエット 
運動の前にマッケンジー法の運動を行う。神経痛があったためにハムストリングが硬くなっている人は、仰臥位にてこの筋肉のストレッチを行う。神経もストレッチされます。
ウォーキング、水中ウォーキングがお勧めです。エアロバイクは前傾姿勢にならないように注意が必要です。
   
  ■症例4
   
 

●病歴
70歳女性 無職 身長150cm 体重60kg 最近正座ができなくなった。歩く時も膝の内側が痛く、少しO脚になった気がする。歩きすぎると膝が腫れてそんな夜は膝の後ろが突っ張る。この10年で10kg太った。

●整形外科的診断
変形性膝関節症
日本人はややO脚の人が多く膝の内側の関節面にかかる負担が大きくなり発症する場合が多い。太ももの骨(大腿骨)と下腿の骨(脛骨)との間の関節では荷重時には体重の6倍もの体重がかかる。腫れた感じや熱感があれば関節内に水が溜まってきていることが多く、伸ばしにくく膝の後ろが突っ張ってきたら要注意である。年齢的な病気の代表だが運動療法が良く効く代表的疾患である。
肥満の評価BMI=27
運動療法:

【運動療法】
(1)治療体操

準備体操として膝を軽く曲げ伸ばししましょう。お風呂の中ですると効果的です。
大腿四頭筋訓練という膝治療の基本体操です。重力に対して5秒間ほど力を入れるため、お風呂の中ですると効果が少なくなります。
膝の内側が痛い人は、臀部の筋トレが有効です。
その他、片足で立ちながらバランスをとるフラミンゴ体操も、痛みが軽減したら行ってください。転倒予防にも有効です。
(2)痛みが治まったらダイエット
  水中ウォーキングはとても有効ですが、プールに入る時と出る時にスロープやステップを使用して膝を強く曲げないように注意して下さい。
エアロバイクはサドルの高さに工夫が必要です。
 
医学的管理
 
1.メディカルチェック
 
心肺機能や血管系のリスクなど全身の評価と整形外科的疾患の評価を行い無理のない運動療法を処方する。糖尿病などエネルギー代謝異常や、ビタミンB2欠乏など脂肪代謝異常がないか注意する。特に、糖尿病や虚血性心疾患や高血圧の方については内科医師と連絡をとり事故のないように計画する。
 
2.評価と調整

計測値などを評価して運動療法や食事療法の変更を指示

 
3.AEDなど安全対策
運動療法の実施に当たってはウォ−ミングアップ、クーリングダウンのストレッチに十分な時間を取り整形外科的疾患の悪化や筋肉の疲労を避ける。また、最近では運動時の心停止や致死性の不整脈に備え、スポーツ施設やリハビリ施設には除細動装置を備えておくことが望ましいとされている。
 
4.薬剤
 
ア)整形外科的疾患の治療薬
イ)食欲中枢をコントロールする薬剤
ウ)代謝異常を補う薬剤:高脂血症治療薬、糖尿病治療薬、ビタミンE・B2、EPAなど
エ)漢方薬:防風通聖散など
オ)アロマ:鎮静より高揚、ラベンダーよりシトラス
カ)有酸素運動の効率を高める:高圧酸素療法、禁煙
 
5.精神状態や性格の分析
 
精神的ストレスが食習慣の異常を来たしていることは非常に多いようです。不眠など他の精神的問題がある場合は、精神科や心療内科に相談するのもひとつの方法と思われます。整形外科から紹介してもらうと受診する抵抗が少ないかと思います。また目標設定も「1ヶ月に1kgやせましょう。」よりも「1日に30分歩きましょう。」の方が続けやすいと思います。ダイエットは強い意志がないとうまくいかないのでしょうか?無理のない目標設定で精神的ストレスをあまりかけずに、医師や管理栄養士・スポーツ施設の指導員と相談しながら、運動と食事のバランスの改善を生活の一部としていくことが長く続けるコツだと思います。ゴールは1ヵ月後ではありません。一生です。人間はそんなに強い生き物ではありません。誰かパートナーを見つけて監視してもらうと続けられると思います。
 
以上は、佐賀新聞社情報誌「fit」の御好意により掲載をしています。
 
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